ビジネスゾーンと呼ばれる
スイングの基本エリア
Published on 25 Nov 2014
谷コーチが提唱するスイング理論は、クラブが動きたい方向に素直に動けるように体を使うという至ってシンプルなもの。再現性が高く、効率的にクラブのエネルギーをボールに伝えるスイングが中田英寿氏と目指すスイングだ。ただ、シンプルがゆえに基本の動作が非常に重要になる。中でも鍵を握っているのが、腰の高さよりも下のエリアでのクラブの動き。この振り幅部分はビジネスゾーンと呼ばれて、プロも常にこのエリアのクラブの動き方に注意している。練習だとついついフルスイングしたくなるものだが、ビジネスゾーンはスイングを構築する上でベースとなる部分だけに、谷コーチはこの振り幅の練習を徹底させるつもりだ。ポイントは、単に手先の動きだけで右腰から左腰の振り幅の大きさで振るのではなく、体をしっかりと使うこと。振り幅は小さくても、下半身主体で振ることで反復性が高くなる。サッカーのチャリティマッチなどで見せる現役時代を彷彿させるプレーからもわかるように、現役から退いたとはいえ、中田氏の下半身は今も強靱。この小さい振り幅でも7番アイアンで、当たれば160ヤードをマークした。ただ、ボールを打ちにいくと、ダフったりトップしたり上手くミートできない。谷コーチは「腕は体から生えているだけで、腕を振らずに、体を回しましょう」とアドバイス。素振りではできても、いざ球を打とうとすると、手先でボールに当てにいったり、飛ばそうとして速く振ろうとしてしまったりする点に難しさがある。ただ、この練習を数十分続けていると、打音が変わり始めた。厚く当たる感触が中田氏にも伝わったようで、良い球を連発するようになった。今回、もうひとつ谷コーチがアドバイスしたのは、バックスイングでヒジが曲がらないように、できるだけ体と手元の距離を遠くにすること。フォロー側も同様にヒジを伸ばした状態をキープして、「1」でアドレス、「2」でテークバック、「3」でフォローというようにリズム良く振る。あとは、この振り幅を基準にスイング弧を大きくしていけばフルスイングになる。今回のレッスンを終えて「下半身に強大なエンジンを持っているので、それを活かすために余計な上半身の動きを最初の内に取り除いておきたいですね。凄いポテンシャルですよ」と谷コーチは言う。中田氏もビジネスゾーンの重要性を体で感じたようで、フルスイングしようと最後までしなかった。(文/出島正登)