ハワイゴルフ合宿篇②
飛距離よりも正確性
マネージメント力をマスターする
Published on 04 Jul 2016
今回のハワイ合宿ではスコアを出すことがひとつのテーマとなっている。合宿の舞台となったホアカレイカントリークラブはハワイでも屈指の難度の高さを誇るだけに、スコアメイクするのは上級者でも至難の技。中田氏が攻略するためには点在するバンカー群やプレッシャーがかかる池を避けたショットが必要になる。ティショットからアプローチに至るまでターゲットを決めて、きっちりボールを運んでいかなければならない。今回はドライバーを封印してアイアンに特化した練習を行っているが、それはスコアを出すために選択したもの。ドライバーの精度は、まだまだ低いものの、芯で捉えられれば260ヤードは悠々と超えてくる中田氏。ただ、それだけの飛距離が出てしまうと、フェアウェイバンカーや池に入る可能が出てくる。「ティショットだからといってドライバーを使う必要はないですよね」中田氏が口にした言葉だが、このような考え方はゴルフを何年もやって、やっと見出せる感覚だと谷将貴コーチは言う。ゴルファーのほとんどの人は飛距離に魅了される。誰よりも飛ばしたいと思い、ドライバーの練習ばかりをして、さらには道具も頻繁に買い換える。ところが中田氏は飛距離にはほとんど興味を持っていないと言ってもいい。それよりも正確性が大事だと言う。中田氏からサッカーの現役時代に、誰よりもインサイドキックの精度を上げることに努めていたという話を聞いた。サッカーにおけるインサイドキックは、基礎中の基礎のキックで正確性が高い反面、強いボールが蹴れないという弱点がある。しかし中田氏は、インサイドキックで強い球が蹴れるようになればと考えたとのこと。正確性の高いもののレベルを向上させる。相当な努力が必要だが、実際にそれを成し遂げて世界のトップで活躍していた。ドライバーよりもアイアンのほうが性に合っていると中田氏が言う理由はそういうところにある。こういったことから谷コーチ曰くマネージメント力を身につけるベースはすでに中田氏の中に備わっているとのこと。スコアを作っていくには技術的な部分だけではなく、コースマネージメントというものが必要になる。コース設計家はあらゆるゴルファーの欲を汲み取り、巧みに罠へと誘う。そこを攻略する点にもゴルフの面白さがある。中田氏は「600ヤードのパー5でも200ヤードを3回打てればパーオンできますよね」と言う。実際にパー5のティショットを5番アイアンや7番アイアンで行うこともあった。危険を回避し、ベストなパフォーマンスを発揮する術は中田氏の体に長年の経験や実績から染み付いているのかもしれない。いよいよ次回はハワイ合宿篇の最終回。今回の合宿によって明確になってきたナイスショットとミスショットの境界線についてお届けします。「中田英寿 VS 片山晋呉 ゴルフマッチプレー対決」に向けて、中田氏は何をつかんだのだろうか。(文/出島正登)