中田英寿×片山晋呉 マッチプレー対決②
Match2(Par3/C.T215y/R.T174y)
Published on 19 Sep 2016
緊張のスタートホールを引き分けに持ち込み、迎えた2ホール目は、恵庭カントリー倶楽部の摩周コース7番パー3が使用された。対決前に行った北海道合宿でのラウンド中も、パー3が勝負のキーを握ることは谷コーチがしきりに話していた。その理由は、片山晋呉プロはフルバックからティショットを打つため、約220ヤードの距離になる。いかにトッププロでもこの距離のパー3でバーディを獲るのは簡単ではない。中田氏が、このホールでパーセーブすれば、ハンデ分で勝利を手にすることになる。しかも、距離的にゴルフを始めた頃から打ち続けたきた7番アイアンの距離なのだ。片山プロのティショットはまさかのミス。ピン位置がグリーンの右サイドに切られていた影響で、右サイドからせり出していた林が邪魔になって、直接ピンにラインを取ることができなかった。スライス系の球で狙ったのが、うまくコントロールできずグリーン右手前に外れた。一方の中田氏のティショットは、トップ目に入ったものの、ピン方向に飛んでいった。グリーンを捉えることはできなかったが、やや奥目のこぼれた位置に運んだ。しかしこのアプローチは、このマッチの解説を担当した丸山茂樹プロも寄せるのは難しいだろうと表現していた。先にアプローチをしたのは片山プロ。バンカー超えで、しかもグリーン面に落ちてから下りという難しい状況を約5メートルに乗せる。中田氏のアプローチは、奥からの下りで60度のウェッジを手にした。ボールのライはラフにやや沈んだ状態だったが、ふわりと柔らかい球で、グリーン面に落ちた。傾斜が下りの分、オーバーはしたものの2メートル弱につけるナイスアプローチを披露した。恵庭カントリー倶楽部のグリーン周りのラフは特に難しく、合宿中にもこのラフは中田氏自身が要注意と警戒し何度も練習を重ねてきた。さらに前日に届いた60度のウェッジ効果が現れた。粘っこい芝は少しでもインパクトで緩むとミスになる。そこで中田氏はアプローチでもっと大きくスイングできれば緩むことはないのではと感じ、60度を提案した。その狙いが的中したのだ。2ホール目はパット勝負となった。ここで片山プロがトッププロの意地を見せて、先に難しいパーパットをねじ込む。これで中田氏のパットはさらに難しくなった。メンタルスポーツであるゴルフの難しさと面白さがこの瞬間に詰まっていると言っていいだろう。距離こそ短いが入れごろ外しごろの微妙な距離を、しっかりヒットしてど真ん中からねじ込んだ。これには対戦相手の片山プロだけでなく、解説の丸山プロも大したもんだと絶賛した。これで中田氏の1アップとなり、片山プロからリードを奪った。キーホールとなるパー3で計算通りに勝ちを手にしたのだ。(文/出島正登)