中田英寿×片山晋呉 マッチプレー対決③
Match3(Par5/C.T519y/R.T492y)
Published on 10 Oct 2016
中田英寿氏の1アップで迎えた最終ホールは、恵庭カントリー倶楽部の摩周コース3番パー5が使用された。この時点で中田氏の負けはなくなった。逆にこのホールを獲るしかない片山プロは劣勢に追い込まれたように見えたが、ここで片山プロの本気が垣間見えた。北海道合宿中もこのパー5は何度もラウンドし、中田氏自身の攻略ルートを入念に練った。その上で、片山プロがこのホールで2オンするのはシチュエーション的に難しいだろうと読んでいた。そうすれば、中田氏がパーであがることができれば、片山プロがバーディでも引き分けに持ち込めると予測していたのだ。しかし、その予想を超えるティショットを片山プロは放つ。おそらく300ヤード近くは飛んでいただろうティショットはフェアウェイの絶好のポジションを捉える。中田氏も負けじと、3番アイアンで会心のティショットを放ち、予定していたマネージメント通りの場所へ運ぶ。中田氏のセカンドショットはやや左足下がりの難しいライ。グリーンまでは打ち上げているため、ボールを上げるのは難しい。ここで痛いミスショットが出てしまう。ただ、この3ホール目まで、大きなミスが出なかったこと自体が奇跡に近いこと。このミスは想定内と言っていい。気を取り直して残り約180ヤードの3打目を放つ。やや右に出たものの、得意のアプローチで寄せれば、まだパーの可能性がある場所だ。一方の片山プロは打ち上げを入れるとおおよそ230ヤードくらいの2打目をグリーン手前ギリギリとはいえ、なんと2オンに成功させてきた。ティショットが上手く打てたとしても、この木が邪魔になるのではと予測していた木を超えるショットを披露した。谷コーチ曰く「絶対に2オンさせると思っていたはずです。あのティショットもかなり振っていましたし、2打目も集中していました」と片山プロが本気だったと話していた。これで寄せるしかなくなった中田氏。ピンまでは40ヤード強ある難しいアプローチをなんとか4メートルに乗せた。片山プロはイーグルパット。これを1.5メートルに寄せて、予定通りのバーディを奪う。中田氏が勝利を手にするには、このパーパットを入れるしかない。下りではあるものの、ショートすればその時点で終了。強気に狙ったパットは、惜しくも外れてしまった。このホールは片山プロが勝利して、マッチはオールスクエア。ドリームマッチは引き分けに終わった。片山プロに勝つことはできなかったが、ゴルフにおけるひとつの目標でもあったプロへの挑戦を終えた中田氏は、勝負を楽しんだ気持ちと悔しさの両方を滲ませていた。飛距離ではない部分でトッププロに勝負を挑み、マネージメントを駆使し、一瞬でも片山プロを追い込んだ。自分なりのゴルフのスタイル、ゴルフの楽しみ方を確立できたようだ。もちろんこれが終わりではない。中田氏のゴルフへの挑戦はまだまだこの先も続いていく。(文/出島正登)