インパクト音を耳で感じることで
パッティングの距離感を出す感覚につなげる
Published on 26 Dec 2016
今回、中田英寿氏が三重県の伊勢カントリークラブでラウンドするとのことで、同行して一緒にラウンドすることにした。スイングタイムラインで中田氏を追いかけはじめて約2年が経つ。今回は外からではなく、一緒にプレーすることで中田氏のゴルフの今に触れてみることにした。伊勢カントリークラブは名匠・井上誠一設計の名コース。自然を巧みに取り入れた日本的なデザインで、美しく難度も高い。今回、一緒にラウンドをさせてもらってなるほどと思わされたのが、その練習に対する中田氏の考え方だ。もちろん質は重要だが、練習量が増えればスキルがアップすることを中田氏は自身の今までの経験からわかっている。ただ、限られた時間の中で良いスコアを出すには、どうすればいいのかということを常に中田氏は考えていたのだ。中田氏は前回のラウンドで調子が良かったからと言って、その動きを続けようとしない。頭で考えて、より良いものを探し出すことを常にしている。その良い例がパッティングだ。ゴルフを始めた当初から持ち前の優れた感覚で、ロングパットをいとも簡単に寄せたり、難しい距離のパットをねじ込んだりしていた。特に7月の北海道合宿の頃からは構え方も良くなり、ボールの転がり自体が向上していた。それなのにパッティングに悩みがある言うのだ。原因は打感だ。インパクトで芯に当たっている感覚がわかりにくく、自分が良いストロークをしているのかどうかがわからないと言うのだ。結果、距離感が出ないと言うのが悩みの中心にある。もちろん中田氏の感覚だけでカバーできる部分はあるが、根本的な技術レベルが築けていなければ、体調など調子が悪い時に対処できなくなる。小さい動きだからこそ確固たる自信に基づいた技術が必要で、プロでも若い頃は強気にバンバン打っていたのが、段々と時を重ねるごとに打てなくなると言うことは多々ある。距離感は打感と振り幅の両方で作られるとよく言われる。打感は言い換えると打音であり、インパクト音を耳で感じることが距離感を出す感覚につながる。中田氏が現在使っているパターのタイプはフェースに樹脂のインサートがあるもので、一般的には打感が柔らかいとされている。もちろん柔らかいのが悪いと言う意味ではなく、これは個々の好みで、プロの中でも柔らかいのが好きだったり、柔らかい方が好きだったりする。中田氏も2年の時間を経て、クラブに対する自分の好みが出てきた。このタイミングで違うタイプのパターを試してみるのもいいかもしれない。(文/出島正登)